リスク共生社会推進センター設立趣意書(抜粋)
現代社会は科学技術を基盤としており、豊かさの追求が社会に良くも悪くも様々な影響を及ぼす可能性が大きくなっている。さらに現代社会は、IoT技術,AI技術や遺伝子医療技術等の先端技術の急激な開発とグローバル化の推進により、豊かさを追求すると多様なリスクが生み出される社会となっている。
この多様なリスクが生み出す個々の課題はそれぞれが相互に関連している。また、ある課題に対応することで別の課題を出現するという状況もあり、それぞれの課題ごとに必要とする対応を行ったとしても、社会が望ましい方向に必ずしも進むとは限らない。
このような状況下にある社会において、納得性の高い社会を構築するための社会技術をリスク共生技術といい、その考え方に基づいて構築・運営される社会をリスク共生社会という。
リスク共生技術とは、社会に潜在する多様なリスクを分析し、それを社会運営の目的の観点から総合的に評価し、施策を決定していく技術である。
リスク共生技術には、二通りの技術体系が必要になる。一つは、個々のリスクを分析・評価していく技術、もう一つは、複数のリスクに対する分析・評価結果を基に、施策を決定していく技術である。
リスク共生技術の難しさは、リスク分析の専門性と共に、専門性の垣根を越えて目指す社会実現のために施策を決定する技術の双方を深めるという、これまでの個別専門分野の取り組みを超えた活動が必要なところにある。
リスク共生社会の実現には、多様なリスクに対する分析・評価の推進とリスクに対する判断の仕組みを社会全体で共有できるものとして構築する必要がある。
リスク分析の高度化は、その分野の特徴を踏まえたものである必要があり、社会としての受容すべきリスク選択のプロセスは、多様な価値観や視点を踏まえて判断をする必要がある。特定の専門分野や事業者、行政単独で決められるものではない。
私たちの目的は、リスク共生社会実現のための産官学と市民との協力による新たな活動の仕組みを構築及びリスク共生技術の開発とリスク共生社会構築の推進である。